チェンマイをジョムトン方面に一時間半ぐらい走る。メイン通りから左に折れると鬱蒼とした竹林が出迎えてくれます。どこまでも続くかのような竹林のアーケードが行き着いたところは、時がスリップしたかのような静寂に覆われた草木染めの織物工房です。そこはバーン・ライ・パイ・ガーム、つまり美しい竹の家と呼ばれる工房。セーンダー・バンシットさんという女性が始めたタイでも指折りのナチュラル織物工房です。ここには彼女の住まいであった北部様式の古民家がそのまま「パー・ダー・コットンテキスタイル博物館」として保存されています。パー・ダーとはセンダーさんの呼称、つまりダーおばさんというわけです。そのダーおばさんは今はなく、現在は娘であるサーオ・ワニーさんが工房を継いでいます。センダーさんはこのように言っていました。「自分たちが作るものは品質のいいものを、そして常に向上・発展することが大切だと考えている。私自身、織物で多くの収入を得ようとは思っていない。愛情を込めて紡ぎ、織りあげること、またわずかでも近所の人の収入を助けることができればと考えている。」と。 しかし工房の運営、なかなかたいへんです。センダーさんが興したパダーコットンを作るにはとても高度な技術と手間暇が求められます。後継者を育てようと教育を行っているのですが、なかなか厳しいものがあり、我慢して継続して工房に残ってくれる人はほんの一握りです。ここでも伝統工芸を継ぐ後継者不足が大きな問題となっています。賃金の面でも工房での仕事は魅力がないため、ラムヤイの収穫時期になればみんないなくなってしまい工房が休業せざるをえない状況になっているのが現実です。
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