檳榔(ビンロウ)という椰子の木です。このビンロウの種子がビンロウジ(檳榔子)。ビンロウとビンロウジという日本語の区別がちょっと紛らわしいです。インドの街で赤い痕を見かけたことがあると思いますが、こわい吐血ではなくあの赤色はこのビンロウジを噛んだ痕です。溶いた石灰を塗ったキンマの葉にビンロウジを包んで噛む。そういう文化がかつてあったのです。ここでいうキンマとはタイ語が変な風に日本語化したもので、タイ語上の意味では、キンは食べるという意味で、マークとはビンロウジのことです。つまりビンロウジを食べる(噛む)という行動が、日本語ではベテルの葉っぱ(キンマの葉)をさすという訳のわからにことになってしまっています。ちなみにこのタイ語のマークは、同じく噛むことに関係するチューインガムというタイ語のマーク・ファランという言葉にも使われます。
インドではパーンと呼ばれてまだ健在ですが、タイでは田舎の老人ぐらいしか今では嗜まないぐらいに廃れてしまいました。田舎から集めてきたオールドタイシルクにたまにこの赤い痕が残っているものがあったりしたり、口中が変色している老人を田舎でみかけるぐらいですね。どんな味がするかというと、爽やかでスーッとして気分良くなります。美味しいかと聞かれると困りますが、不味くはないですね。嗜好性があるので慣れると気分良くなるのでしょう。噛んでいると口中に赤い唾液が溜まってくるのですが、この唾液は飲み込まずに吐き出すわけです。しかしこのたくさん溜まった唾液のみを吐き出すということが結構難しかったりするわけで、私はあまり上手くできませんでした。
チェンマイをジョムトン方面に一時間半ぐらい走る。メイン通りから左に折れると鬱蒼とした竹林が出迎えてくれます。どこまでも続くかのような竹林のアーケードが行き着いたところは、時がスリップしたかのような静寂に覆われた草木染めの織物工房です。そこはバーン・ライ・パイ・ガーム、つまり美しい竹の家と呼ばれる工房。セーンダー・バンシットさんという女性が始めたタイでも指折りのナチュラル織物工房です。ここには彼女の住まいであった北部様式の古民家がそのまま「パー・ダー・コットンテキスタイル博物館」として保存されています。パー・ダーとはセンダーさんの呼称、つまりダーおばさんというわけです。そのダーおばさんは今はなく、現在は娘であるサーオ・ワニーさんが工房を継いでいます。センダーさんはこのように言っていました。「自分たちが作るものは品質のいいものを、そして常に向上・発展することが大切だと考えている。私自身、織物で多くの収入を得ようとは思っていない。愛情を込めて紡ぎ、織りあげること、またわずかでも近所の人の収入を助けることができればと考えている。」と。 しかし工房の運営、なかなかたいへんです。センダーさんが興したパダーコットンを作るにはとても高度な技術と手間暇が求められます。後継者を育てようと教育を行っているのですが、なかなか厳しいものがあり、我慢して継続して工房に残ってくれる人はほんの一握りです。ここでも伝統工芸を継ぐ後継者不足が大きな問題となっています。賃金の面でも工房での仕事は魅力がないため、ラムヤイの収穫時期になればみんないなくなってしまい工房が休業せざるをえない状況になっているのが現実です。
古くからあるTwin Jade Pagoda ブランドの樟脳石鹸。タイ人にとっては子供の頃に使っていたとても懐かしい香りの石鹸。日本人にとっては石鹸というよりも、樟脳は衣服の防虫剤の香りでしょうか。子供の頃嗅いだ着物の匂い。いずれにしても樟脳を使ったとても爽やかな石鹸です。樟脳は鎮痛消炎作用、防虫効果があります。そのためこの樟脳石鹸を使うとメントールのような清涼感が身体をみたし、非常に気持ちよく、水浴び後の爽快感が病みつきになります。身体に残る樟脳の香りにも防虫効果があるのか多少の虫除けにもなるようです。タイではフルーツやハーブを使ったお洒落な石鹸がたくさん売られていますが、この樟脳石鹸、ちょっとレトロなパッケージですが、今風な石鹸にはないシンプルさがなかなか気に入ってます。樟脳大好きです。
チェンマイのDe Naga ホテルのオープンセレモニー。バラモン僧が儀式を司ります。儀式全体をプロデュースしている人はナイトバザールにお店を出していた人でした。ブラフマー神像、ヴィシュヌ神像やガネーシャ神像が飾られます。ホラ貝が吹かれ、クライマックスにはホーマー(護摩)の儀式が行われました。この祭壇で燃えているのはアグニ神です。このアグニ神(火の神)に供物を投じ、それが燃え、煙となって天に届けられるのです。つまりアグニ神は天界と人間界を結ぶ媒体の役割をするたいへん重要な神様なわけです。アグニ神に投じる供物が下の写真です。タイはテラワーダ仏教の国として知られていますが(もちろんイスラム教徒もヒンドゥー教徒、シーク教徒も多いです)、その仏教はヒンドゥー・バラモン教の影響を強く受けて渾然一体となっているところもあり、王室関係の儀式ではバラモン教が深く関わっているぐらいです。
Hong Hian Sueb Sarn Lanna
つまりランナー学協会(The Lanna Wisdom Institute )です。
ランナーと呼ばれる北タイ独特の豊かな文化を次の世代に継承させるために設立された協会。ついこの間までランナー文化の継承者である北タイの人々さえもが、この豊かなランナー文化をほとんど気にも留めず廃れるに任せていたのが現実でした。経済発展とともに自らの文化に対して自信を深めてきた北タイの人々が自分たちのルーツであり誇りとする文化であるランナーに対しての関心を抱くようになったきたのは自然なことでしょう。一時は危機に瀕していた織物・天然染色技術・芸能音楽・マッサージ技術・北タイ式漢方薬・自然農法などの伝統的な知識を見直し、知識を深め、次の世代にこの伝統の知恵を継承させようとするのがこの協会の理念です。
タイ人のみならず、その知恵を学ぼうとする者に広く門戸は開かれています。実際、ランナー文化に興味のある人が世界中から訪れています。もちろん日本から勉強にやってくる人たちも多く、敷地内には伝統的な宿泊も可能な民家も併設されているので気合いを入れて勉強できます。
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